池上金男「鉄血の島」(4) [日記]

1964年(昭和39年)、日本に大きな出来事が発生した。戦後の復興を象徴するかのように東京オリンピックが開催された。その年中央政界に異変が起こった。
時の総理、池田勇人が健康の不調から築地の癌研に入院したのだ。当然、総理の座は誰かに譲らなければならない。池田は共に吉田茂に私淑し、その指導を受けた佐藤栄作に禅譲したいと思った。しかし、池田派の後継者は前尾繁三郎であった。前尾は京都出身の政治家である。そこで、佐藤はある人を介して松本に「前尾に出馬しないよう説得して欲しい」との相談を持ちかけたのである。
松本はその人と前尾に会い「天下の情勢があなたを望んでいないのだ。」として「北方領土問題それに沖縄返還問題への取り組みをするためには佐藤しかいない。国を思うのなら身を引いてほしい。」と説得し前尾もそれに同意した。
その報告をするために佐藤に会った松本は「私に一つお願いがある。聞いて貰えますか」
佐藤は顔色を変えて聞いた。
「総理に就任したら出来るだけ早い機会に沖縄を訪れ、英霊を慰めると共に、他国の施政権下にある沖縄同胞の実情を見ていただきたい。沖縄が祖国に返るまでは、戦後という言葉は終わらない」と。

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